その他の脳血管疾患

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その他の脳血管疾患について

その他脳血管疾患

脳血管疾患には多種多様なものが存在します。これらの疾患は、脳梗塞、脳出血やくも膜下出血といった脳卒中を引き起こす要因となりうる疾患です。以下に代表的な疾患の概要を記載します。

頸部内頚動脈狭窄症

病気の概要

心臓から脳へ血流が流れる際には必ず、首の血管を流れます。脳へ流れる血流の多くが、頸動脈を流れて脳へ到達します。

頸動脈は総頚動脈から内頚動脈および外頚動脈へと分岐し流れていきますが、脳への血流は基本的には内頚動脈を経由していきますので、総頚動脈から内頚動脈の部分の評価が必要です。この部分にプラークという炎症性物質や油分などの不純物がたまることで、頸動脈の内腔を狭めてしまいます。プラークが柔らかかったり、狭窄が進行すると脳梗塞や一過性脳虚血発作を引き起こします。

診断

超音波検査やMRI検査で診断をし、それらの検査により狭窄率を割り出します。通常、狭窄率(NASCET%)は、50%未満を軽度、50~70%未満を中等度、70%以上を高度と分類します。
頸動脈エコー検査では、狭窄部位の血流速度を測定します。血流速度(PSV)の値は、狭窄率を150㎝/sで50%、200㎝/sで70%と、かなり正確に診断することが可能です。

MRI(頚部MRA)で、狭窄率が50%以上の頸動脈狭窄症を有する患者さんの脳梗塞発症率は、年間2%程度と推察されており、脳梗塞や一過性脳虚血症などを発症してしまった場合や症状がなくても狭窄率が70%以上の高度狭窄を有する場合は、脳梗塞発症予防を目的に外科的手術が推奨されます。

治療

ファーストラインは、高血圧・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病管理、飲酒制限、禁煙指導や抗血小板薬(血液をサラサラにする薬)を使用するといった最良の内科的治療(Best Medical Treatment:BMT)です。

多くの場合は、このBMTで進行予防は可能ですが、上記に記したように脳梗塞を発症してしまったり、狭窄が進行して高度になってしまった場合は、頸動脈内膜剥離術(carotid endarterectomy:CEA)もしくは頸動脈ステント留置術(carotid arterial stenting:CAS)による脳神経外科手術が必要になります。

いずれの治療も頸動脈狭窄症に対しては、確立された手術方法ですが、それぞれの適応やメリット、デメリットがあります。担当の脳神経外科医の先生からしっかりと説明を受けて選択する必要があります。

脳動静脈奇形

病気の概要

脳動静脈奇形(Arterio-Venous Malfomation:AVM)は、脆弱な異常血管で構成された血管の塊(=ナイダス)が、脳の中にできる病気です。胎生早期にできる先天性異常といわれています。
この塊が大きくなったり、出血することで脳に不可逆的なダメージを起こしてしまいます。この病気の年間発見率は、10万人あたり1.1~1.4人と珍しい病気です。やや男性に多く、脳出血で発症する際は20~40歳代に多いと言われています。この病気を持っている方が、脳内出血を起こす危険性は年間3%前後という報告があります。

珍しい病気ではありますが、出血率は比較的高い病気であり、出血源のナイダスが脳の深部に存在する際は摘出手術も難易度の高いものとなります。症状を呈した場合、最も多いものは出血、次いでてんかんを発症することが多いです。

診断

頭部画像診断で、偶然診断されることが多く、脳神経外科領域の疾患です。

頭部MRIでナイダスが脳内にあれば、診断がつきます。T1強調画像、T2強調画像、FLAIR画像、SWI、MRAなどの撮像を行うことで診断可能です。造影剤の使用は不要です。
最終的な確定診断と重症度の判定は、大きな病院で脳神経外科の先生に脳血管造影検査をやってもらう必要があります。

治療

AVMを脳神経外科医により摘出することが基本となります。ただし、AVMの大きさ、部位、異常血管の流れなどにより分類し、手術方法を決定していきます。

脳血管内治療は、栄養動脈を通して塞栓物質で段階的に固めて行く治療方法です。通常は外科的に摘出する前の出血リスク低減のために行われますが、AVMが深部に存在し摘出が困難な場合は、血管内治療による塞栓術のみで治療をすることもあります。局所放射線療法と併せて行うこともあります。

硬膜度静脈瘻

病気の概念

硬膜度静脈瘻(Dural arteriovenous fistula:dAVF)は、硬膜という脳の表面にある厚い膜の中で動脈と静脈が瘻孔を形成する病気です。この疾患は後天的(生まれたのちに発症する)と言われています。

原因は脳静脈洞血栓症、血液凝固異常、外傷、ホルモンバランスの異常、静脈炎、静脈性高血圧、原因不明などが挙げられます。発病率は2000年ころまでは、0.15人/10万人/年程度と報告されていましたが、近年の画像診断技術の向上と高齢化社会の影響もあり2019年には1.04人/10万人/年と報告されており、明らかに発病率が上昇しています。

また、病気は頭蓋内(頭蓋骨の内側)のどこにできるかも重要な予後因子でありますが、好発部位の順位も逆転しています(海面静脈洞部>横静脈洞→海面静脈洞部<横静脈洞)。
今まで珍しい病気であり、知られていなかった病気の見つかるようになり、次々と新たな事実が分かってきている病気です。

症状

頭蓋内のできた場所や血液の流れる方向などにより、様々な症状を呈します。
耳の奥(横静脈洞部硬膜動静脈瘻)にできると、「ザーッザーッ」と心拍に一致した川の流れのような雑音を絶え間なく聞こえることがあります。また、眼の奥(海面静脈洞部硬膜動静脈瘻)にできると白目が充血し、患側の眼球自体が突出したりすることもあります。

いずれも症状が強い場合は、病気が進行している可能性もありますので、専門の脳神経外科の先生に診てもらいましょう。これらの症状を経て、頭蓋内出血や静脈うっ血による脳浮腫、けいれんを引き起こします。最も重篤化する症状に頭蓋内出血がありますが、その出血率は1.8%/年と報告されています。

診断

頭部MRIで発見し、脳血管造影検査で確定診断と重症度を判定します。

当然いきなり、入院して脳血管造影検査をする患者さんはいませんので、頭部MRIでの検査が重要になります。専門的な話ですが、Time of flightによるMRA検査を行い、MIP画像までしっかりと診ないと見過ごしてしまうことがあります。この病気の診断には専門性と経験が必要なため、脳神経外科専門医や放射線科専門医の読影が必須となります。

治療

まずは、診断の過程で治療対象か否かをしっかりと判断することが重要です。

治療が必要と判断された場合は、基本的には脳血管内治療による瘻孔部の塞栓術が基本になります。種類によっては外科的(開頭手術)に治療をすることもありますが、多くは脳神経外科医による脳血管内治療が主体となります。多くは、静脈側から瘻孔部にカテーテルで到達し液体塞栓物質やコイルを使用して、瘻孔部を閉鎖します。瘻孔部が閉鎖されれば動脈側から静脈側への異常な流れが消失しますので、頭蓋内出血の危険性などその他の症状が治まっていきます。

もやもや病

病気の概要

もやもや病は両側内頚動脈終末部。前大脳動脈・中大脳動脈の進行性狭窄もしくは閉塞と、その周辺の脆弱な異常血管網の発達を起こす原因不明の疾患と定義されています。分かりやすく言い直すと、脳の正常血管が原因不明に狭窄・閉塞しその代わりに脆い異常血管が増殖することで、脳梗塞や脳出血などの脳卒中を起こす病気です。けるが必要となります。有病率は10万人当たり6人程度、若年女性にやや多いです。

発症原因として、近年の研究で17q25上のRNF213遺伝子が疾患の原因とされ、家族性がもやもや病全体の中で12%程度と多く、遺伝的要因が有力な説となっています。

症状

小児例では、虚血(脳梗塞)が多く、激しい運動や吹奏楽など過換気になる状況下で、脳血管の収縮が助長されると様々な脳虚血症状(運動麻痺・意識障害・痙攣)がおこります。

反対に成人例では、脳出血を起こすことが増えてきます。画像所見では、「高血圧性脳出血ではあまり見ない」「少量の脳室内出血を起こす」など、やや特徴的な部分も認められます。

診断

左右どちらか一方でも、頭蓋内動脈の閉塞もしくは狭窄と異常血管網が指摘できれば、診断可能となりました。また、頭部MRI(1.5テスラ以上の精密機器)にて診断が可能です。

診断基準は頭蓋内内頚動脈終末部の狭窄または閉塞がみられ、大脳基底核という脳底部に異常血管網片側で2か所以上指摘できた場合と定義されています。診断は専門性が高く、この病気は進行性であり、「病期」というものが存在しますので、脳神経外科専門医の適切な診断を受けることが大切となります。

治療

基本的に、無症状の患者さんに対しては画像検査を定期的に行いながら慎重に経過を診ていきます。脳神経外科で行うバイパス手術が、唯一の根本的治療になります。

バイパス手術には間接・直接が存在します。
まず間接バイパスというのは、血管と血管を直接吻合せずに、頭皮や筋肉、硬膜などの自身の組織を脳表面に癒着させ、新生血管の増生を期待するものです。多くの場合、小児に対して行われます。
対して、直接バイパス手術は、成人患者さんに行われます。頭皮の血管である浅側頭動脈と脳表面の中大脳動脈を手術より吻合し(STA-MCA bypass)、浅側頭動脈→中大脳動脈の新しい血液のルートを作ります。

これらの方法により、脳への新しい血流ルートを作り出すことで、脳卒中を予防するのです。

まとめ

これらの病気はMRI検査の中のMRA(Magnetic Resonance Angiography:磁気共鳴血管撮影法)で、診断が可能です。しかし、診断は専門的な知識と経験が不可欠です。脳神経外科専門医によるMRI検査が必須と考えております。

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