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脳腫瘍とは?

脳腫瘍とは、頭蓋内に発生する新生物のことを指します。
脳腫瘍は、良性か悪性かといった腫瘍の種類や、頭蓋内のどの場所に発生するかによって、手術の難易度や予後が大きく異なります。WHO腫瘍分類2021では、病理学的特徴・遺伝子型・発生部位などにより、腫瘍の種類は110種類とされています。
良性腫瘍について
良性腫瘍は50歳代に多く、男女比は1:1.6と、やや女性に多い傾向があります。
ここでは、良性腫瘍の中でも頻度の高い髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腫瘍についてお話しいたします。
髄膜腫
髄膜腫とは
髄膜腫は、くも膜表層細胞から発生する脳実質外発生の腫瘍です。
髄膜腫は、良性腫瘍の中で最も頻度の高い腫瘍です。人口の0.2〜1%、200〜500人に1人とされており、脳腫瘍の中では比較的多い病気です。
髄膜腫の悪性度と診断について
髄膜腫といっても、病理や遺伝子の違いにより、腫瘍の病態はさまざまです。WHOの分類ではグレードⅠ〜Ⅲまで存在し、良性から悪性まで多岐にわたります。この悪性度の診断に関しては、MRI画像だけでは限界があり、確定診断には手術により腫瘍検体を切除し、病理検査・遺伝子検査を行う必要があります。
無症候性髄膜腫と経過観察について
一方で、頭痛の検査や、たまたま頭をぶつけた際などにCTやMRIを撮影し、偶然見つかることも少なくありません。このような無症候性の髄膜腫は、発生部位や大きさにより、経過観察となることも多いです。
また、髄膜腫を認めても、脳幹部周囲など頭蓋内の深い位置に発生しており、摘出手術が困難な場合もあります。この場合は、腫瘍が大きくならないかなどを、MRI画像検査で慎重に経過観察する必要があります。
無症候性の円蓋部髄膜種

脳幹部周囲の髄膜種

症状がある髄膜腫について
一方で、頭痛や記憶障害、めまいなどの症状を呈したり、大きな髄膜腫では手術のタイミングが遅れることで後遺症を患ったり、生命予後にかかわる可能性もあります。
頭痛、高次脳機能障害で発症した巨大な髄膜種

髄膜腫の症状は、大きさや発生部位によりさまざまです。慢性的に上記に挙げたような症状が持続する際は、必ず脳神経外科専門医に相談してください。
神経鞘腫
神経鞘腫とは
神経鞘腫は、末梢神経を構成する細胞成分であるシュワン細胞(Schwann cell)から発生する腫瘍で、12種類ある脳神経のどこからでも発生します。
原発性脳腫瘍(頭蓋内から発生する腫瘍)の約10%を占め、性別では女性:男性=1.3:1で、50歳代に最多の成人脳腫瘍です。このため、私たち脳神経外科専門医にとっては、比較的遭遇率の高い脳腫瘍といえます。
神経鞘腫は、三叉神経鞘腫、聴神経鞘腫など、発生した脳神経の名前の後ろに「鞘腫」と名付けられます。神経鞘腫で最も多いものとして、聴神経鞘腫が挙げられます。
聴神経鞘腫について
聴神経鞘腫の症状
聴神経鞘腫の初発症状として最も多いのは、聴力障害です。特に、高音の聴力低下が顕著となります。
片側の聴力障害の患者さんの平均2.6%、回復不能な突発性難聴の患者さんでは8〜10%程度の高い確率で、聴神経腫瘍が発見されます。
一般的には、数年という長い経過で進行する聴力障害の患者さんで見つかることが多いですが、小型腫瘍に限定すると、15%程度で突発性難聴の形式で発症することがあるとされています。併存する症状として、内耳道に並走する顔面神経(第Ⅶ脳神経)麻痺を発症することもあります。
聴神経鞘腫の診断
診断にはMRI検査が有効です。しかし、腫瘍が小さく、ページ上部の写真のように内耳道に限局した小さい腫瘍では、内耳道をターゲットとした詳細な画像検査が必要になります。
CISS画像というMRIの高分解能画像による診断が有効です。この疾患を疑わずにMRI検査を実施すると、小型の聴神経鞘腫を見落としてしまうケースも少なくありません。
このため、難聴を自覚して耳鼻科を受診した後は、脳神経外科医による問診と診察、頭部MRI検査を受けることが、より確実であると考えます。
聴神経鞘腫の治療
治療方法は、脳神経外科医による開頭手術、または定位放射線治療(γナイフ)という放射線治療になります。
聴神経鞘腫の自然歴としては、50%前後で1〜2mm/年程度の増大があり、何らかの治療を要するケースが多いです。その中の数%は、急速な増大(3〜4mm/年の増大)を示すこともあります。
良性腫瘍ですので、開頭手術にて全摘出を行うことで完治が望めます。小さい腫瘍であれば、熟練した脳神経外科医が適切な神経モニタリング下で手術を行うことで、顔面神経機能の保存は90%以上、有効聴力の保存も50〜80%近く得られるというデータがあります。
定位放射線治療(γナイフ)は、小型(2.5cm未満)の腫瘍に対して行うことが多く、有効率は90%以上で、有効聴力の保存も70〜90%と高い数字を保持しています。
治療直後に一過性に腫瘍が大きくなることがありますが、その後、徐々に数年かけて縮小していきます。定位放射線治療は頭を切ることがなく、低侵襲に、確実な腫瘍縮小を狙えることが最大のメリットとなります。
左内耳道小型(約11㎜)の聴神経鞘腫

下垂体腫瘍
下垂体腫瘍とは
下垂体とは、頭蓋内に存在する内分泌器官です。正確にいうと脳そのものではありませんが、頭蓋内に存在する器官から発生する腫瘍であり、脳腫瘍に分類されます。
下垂体腫瘍の分類
下垂体腫瘍は、下垂体前葉ホルモンである成長ホルモン(GH)、乳汁分泌刺激ホルモン(PRL)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)、下垂体後葉ホルモンである抗利尿ホルモン(ADH)、オキシトシンといった内分泌ホルモンの分泌に影響する機能性と、影響しない非機能性に大別されます。
機能性下垂体腺腫について
機能性下垂体腺腫で多く見られるものとしては、PRL産生腫瘍やGH産生腫瘍が挙げられます。
これら機能性の下垂体腺腫では、無月経になったり、原因不明の高血圧、四肢末端の肥大化や特徴的な顔貌を呈したりすることがあります。
これらの腺腫は、薬物療法により腫瘍縮小効果が期待できるため、手術を回避できる可能性があります。このため、下垂体腺腫=手術ではありません。
手術や放射線治療が必要となる下垂体腺腫
手術や放射線治療が必要な下垂体腺腫には、非機能性の下垂体腺腫であったり、腫瘍が大きく(直径20mm以上)、周囲の脳や神経を圧迫している場合、腫瘍内で出血を起こしている場合、視神経を圧迫することで視野障害を呈している場合などが挙げられます。
典型的な視野障害では、左右外側の視野が狭くなります。
下垂体腫瘍の手術について
代表的な手術法は経蝶形骨手術といい、鼻腔や上歯茎から頭蓋内のトルコ鞍部(下垂体が存在する部位)に到達します。
そこから神経内視鏡を使用して、死角をしっかりと観察し、腫瘍の全摘出を目指します。
この手術は術野が特に狭く、神経内視鏡の扱いに慣れている必要があり、脳神経外科医の技量が摘出率や合併症率に直結します。
下垂体腫瘍の診断とご相談について
下垂体腫瘍では、画像診断と内分泌採血による診断、そして治療法の選択がとても重要になります。
視野異常や長引く頭痛を自覚する方、他院のMRI検査で下垂体腫瘍と診断され、お悩みの方は、横浜市神奈川区の脳神経外科・内科 上田クリニックにぜひご相談ください。
手術加療を要した両耳側半盲で発症した非機能性下垂体腺腫


悪性脳腫瘍
臓器の上皮細胞から生じた悪性腫瘍は「がん」と呼びますが、脳に生じたものは神経上皮細胞起源であり、「がん」とは、呼びません。代表的なものに神経膠細胞由来の悪性神経膠腫(グリオーマ)が存在します。その悪性度は高く、進行が速いため少しでも早い診断と治療が必要となります。
脳腫瘍の悪性度は、4段階の「グレード」によって示され、グレード1は良性 グレード2は境界型 グレード3・4を悪性腫瘍と診断します。
該当する腫瘍
悪性神経膠腫、悪性リンパ腫、転移性腫瘍など
脳腫瘍の症状
脳腫瘍が生じても、すぐに症状が現れるとは限りません。腫瘍が大きくなって脳を圧迫するようになると、圧迫を受けた部位に応じて様々な症状が現れます。明らかな症状がなく進行するうえ、症状からの識別は困難ですので、適切な検査による正確な診断が重要です。
頭痛
腫瘍によって脳が圧迫されたり、脳液の流れの悪化が起きたりすると、頭蓋内の圧力が高くなり頭痛が起こることがあります。頭痛自体はありふれた症状ですが、脳腫瘍による頭痛は慢性化することが多いため、長期にわたる原因不明の頭痛にはご注意ください。
吐き気・嘔吐
ありふれた症状ですが、頭蓋内圧亢進症状の一つとして、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。特に頭痛に伴うものや突然の症状の場合は、注意が必要です。
神経症状
脳腫瘍ができた部位に応じて、以下のような様々な症状が現れます。
- 視覚障害(視野の欠損・狭窄化、物が二重三重に見える など)
- 感覚障害(めまい、ふらつき、足がもつれる)
- 手足のしびれ
- 記憶力・判断力の低下
- 味覚の低下
- 物が飲み込みにくい など
脳腫瘍の検査・治療
脳腫瘍の発生原因には不明瞭なことも多く、発生しても初期ではほとんどが無症状です。良性脳腫瘍であっても、腫瘍が大きくなると脳を圧迫しますので、早期に発見して適切な対応を行う必要があります。小さな腫瘍の早期発見には、MRIによる画像診断が有効です。
脳腫瘍の治療の基本は手術で、腫瘍がすべて摘出できなかったり、悪性腫瘍の診断となった場合は、補助療法として放射線治療や化学療法を行うこともあります。また、脳腫瘍の位置が深部で、安全に摘出できないと判断した際には、放射線治療単独という手段もあります。いずれの場合も専門病院での治療となりますので、当院での検査で脳腫瘍が発見され、治療が必要と判断した場合には、提携先医療機関へ迅速にご案内いたします。
「おかしいな」と思ったらすぐに脳神経外科へ
「頭痛とめまいがずっと続いている」などはもちろん、「急に視力が落ちた」「仕事のミスが増えた」などの症状が、脳腫瘍によって引き起こされているケースもあります。日常で違和感を覚えた際は、原因を特定するためにも、早めの脳神経外科受診をお勧めします。
