- HOME>
- 脳梗塞
脳梗塞とは?

脳梗塞は脳卒中(脳血管障害)の一つです。脳貧血などと表現されることもありますが、発生機序は何かしらの原因により脳の血管が閉塞し、脳の一部への血流が途絶えることによって生じます。血流の途絶えた脳細胞は壊死するため後遺症を残す可能性があるほか、迅速な処置が行われなければ命を落とすこともあります。
脳梗塞の症状
脳梗塞の主な症状には以下が挙げられます。発作の前兆として軽度な症状が現れることもありますが、全く症状がないまま大きな発作が起こることが多いです。症状に気づいた時には、すぐに脳神経外科を受診してください。
体の片側の麻痺
片側の顔や手足が突然動かなくなる症状です。これらの症状は、動かしづらいという軽度な不全麻痺から全く動かすことのできない完全麻痺まで症状の出方は様々です。
症状は一過性に出現し、改善することもあります。明らかな麻痺症状でなくても、新聞のページがめくりにくいや手に持っているものを落としてしまうなど自身で気づきにくい症状もありますので、繰り返したり長く続くようであれば、すぐに脳神経外科の医療機関を受診してください。
言語障害
舌がもつれて言いたいことがうまく話せない構音障害、呂律障害などが起きることがあります。また、左脳は多くの人が、優位半球といい言語領域を司っています。その領域が侵されると頭に浮かんでいる言葉が口に出せないと、もどかしい状態になる運動性失語症や物や人の言葉・会話が理解できずに話せなくなる感覚性失語といった症状が出現します。言語の障害は脳神経疾患の重要な症状の一つです。
感覚障害
痺れ、痛み、熱さや冷たさを感じにくい~感じない、痛みに敏感になるなど、感覚障害は症状が多岐にわたります。
半身や顔全体など広範囲の感覚障害が突然出現した際は、要注意です。
その他、浮動性のめまいなどが、位置覚の異常や振動覚の異常である可能性もありこの症状も感覚障害の一つの可能性があります。
視覚障害
どちらか一方の視野が完全に黒くなってしまう、数秒から数分間片方の目の視界が完全に消失した状態になります。これを一過性黒内障言います。脳へ向かう内頚動脈という太い血管に高度の狭窄のあり、眼球への血流が著しく低下すると起きる可能性があります。
また、視野の一部が欠けたり、突然の視力の低下、見る方向により見えない箇所があるなどの症状も脳内の後頭葉という目で見たものを理解する領域の脳梗塞の可能性もあります。ものが2重に見える、重なるなどの症状が出現する症状は複視といい、脳神経の1つである動眼神経核の虚血である可能性があります。
このように視覚・視野・視力障害などは、脳神経と非常に密な関係がありますので、症状を自覚した際は脳梗塞や脳出血などの脳卒中の可能性を考えないといけません。
意識障害
意識障害には何か変、ぼーっとするなどの軽微な状態から昏睡状態まで様々です。
重症な脳梗塞であればあるほど、意識障害を呈することがあります。
※詰まった血管が開通すると、これらの症状は一時的に治まります。ただし、あくまで一時的なもので、再び詰まりが生じて大きな発作を起こす可能性もあります。異常を感じた際は放置せず、すぐに医師に相談して適切な検査を受けてください。
認知機能異常
認知機能とは、人間の高次脳機能の中の1つであります。脳の中では、1つの機能を担う箇所はある程度、解剖学的に解明されておりますが、小さい脳梗塞が散在していたり、そうでない箇所に脳梗塞を起こした場合、局所的な症状(麻痺や言語障害など)がでないことが、しばしばあります。ある一定の記憶が定かでない、昨日まで普通であったのに認知機能が突然進行して、今までできていたことができなくなったなど、一見、認知症が進行したといった症状が脳梗塞の症状であることもよく経験します。認知症の進行や高齢だから仕方ないと決めつけることなく、なるべく早く頭部MRI検査を受けることが必要です。
脳梗塞の原因
脳梗塞の発生機序として、以下の5つが考えられます。
①アテローム血栓性脳梗塞
生活習慣病(高血圧・高脂血症・糖尿病)などが原因で、頸部・脳の主要血管に狭窄・閉塞を起こすことで発症する脳梗塞です。頭頸部のMRIや頸動脈エコー検査で狭窄・閉塞が存在しその還流領域に脳梗塞を起こすことで診断されます。
狭窄の原因となっている血管の中のplaqueが破綻したり、そこでできた血栓が塞子となって脳血管の遠位に飛んでいき詰まってしまう(動脈₋動脈塞栓症)ということも起こりえます。脳梗塞は比較的、広範囲となることや散在性となることもあります。その分、症状も重篤化することがあります。
②ラクナ梗塞
やはり、生活習慣病に起因した脳血管障害です。アテローム血栓性脳梗塞と違い、穿通枝(脳を突き抜けるように走行し脳の深部を栄養する細動脈)など、通常のMRI検査やCT検査で指摘できない細い血管の動脈硬化により起きる脳梗塞です。
MRIの画像特徴としては、脳梗塞の範囲が最大でも20mm未満と小さい脳梗塞であることです。ただし、小さい脳梗塞でも先の述べたように脳の深部に向かう血管に起きることもあるため、運動麻痺や半身の痺れなど重篤な症状を呈することがあります。
③心原性脳梗塞
心臓でおきる特殊な不整脈によって誘発される脳梗塞です。代表的な不整脈に心房細動があります。不整脈により心臓内で血栓が形成され、それが心拍動に乗って、脳血管を閉塞させてしまいます。血栓は大きく中枢測(心臓に近い側)での閉塞をきたすことが多く、脳梗塞の範囲が片側大脳半球に及ぶこともあるような広範囲脳梗塞になることもあるため、意識障害や完全片麻痺、全身けいれんなど生命を脅かす重篤な状態に陥る可能性があります。
心原性脳梗塞は近年、機械的血栓回収療法というカテーテル治療で回復できる可能性があります。この治療は、1分1秒を争う時間との勝負です。本治療は、指定医療機関での専門医による治療が必要不可欠です。当院からは近隣の指定医療機関に迅速に搬送することが可能です。
このような危険な不整脈は動悸などの自覚症状がなく、夜間睡眠中に発作がある可能性もあります。Holter心電図という24時間心電図検査で、検出できる可能性が高まります。
④その他
悪性腫瘍(癌など)、感染症、膠原病、血管炎などに続発して起きることがあります。これらの疾患に罹患すると、体内で血栓が形成されやすい状態となります。この血栓が脳血管に詰まると脳梗塞を引き起こします。
⑤潜因性脳卒中(ESUS)
ESUSはEmbolic Stroke of Undetermined Sourceの略で、比較的新しい概念の脳梗塞です。しかし、実臨床おいて症状のある脳梗塞のうちの約4分の1で、前述した①〜④の原因を特定できない場合があります。つまり、原因不明の脳梗塞ということです。
診断は、他の脳梗塞の可能性を消していかないといけないので、頭蓋内血管や頸動脈、心臓の検査をしっかりと行う必要があります。また、人は生まれたばかりの時に卵円孔という心臓の中隔壁に穴があります。これは通常、生後1か月程度で閉鎖しますが、閉鎖せずに穴が開いたままの方が、4人に1人くらいいると言われています。この卵円孔開存症が、ESUSの原因の可能性があると言われていますが、確証はありません。心臓超音波検査で卵円孔開存症の診断は可能です。
再発予防などの治療法は、バイアスピリンという血液サラサラの薬の内服以外は確立されたものはありません。
脳梗塞の治療・予防
急激な症状を発症した場合の治療は、急性期医療機関で行います。脳梗塞の増悪・進行予防のために血液をサラサラにする薬や脳循環改善薬などの投与を行い、慎重経過を診ていきます。また、地商早期からリハビリを行い、失われた機能の改善に努めます。発症から治療までの時間が短いほど回復できる可能性が高まりますので、脳梗塞の発症後は迅速な対応が重要となります。ご自身での通院が困難な場合は、迷わず救急車を呼ぶか、周囲の他の助けを借りてください。また、上記した症状が前兆として現れた場合には、すぐに脳神経外科を受診してください。
予防が最も重要です
脳梗塞は一度発症すると重篤な症状を引き起こすので、ならないように予防することが最も大切です。特に糖尿病や高血圧、脂質異常症などの生活習慣病や喫煙 メタボリックシンドローム、過度の飲酒習慣は、脳梗塞の大きなリスクとなりますので、適切な治療と生活習慣の改善を行って発症リスクを回避するようにしましょう。
発症後の再発にも要注意
脳梗塞は再発の可能性が高いのも特徴です。回復した後も、かかりつけ医と相談しながら再発予防に努めてください。脳梗塞の前触れを感じた際に、すぐに受診できる環境を整えておくことも大切です。
脳梗塞のご相談は上田クリニックへ
当院は患者さんの継続的な生活習慣病管理をいたします。親族に脳梗塞を発症した方がいらっしゃる方や、基礎疾患でお悩みの方は、当院へお気軽にご相談ください。