先日、高血圧の講演会の座長として、とある勉強会に参加してきました。
参加されているのは、横浜市立市民病院の循環器内科や脳神経外科の臨床の最前線でご活躍されている先生方でした。テーマは各診療領域での血圧管理でした。私は以前より脳血管を専門にしており、生活習慣病管理における血圧の管理はガイドライン通り厳格に行うべきと考えています。血圧については間違った情報が、ネット上などで散見されることが非常に増えてきました。そのため、患者さんも困惑してしまい現在の治療に不信感や不安を覚えてしまいます。
実際は我が国の研究で、収縮期血圧(上)が120㎜Hg未満、拡張期血圧(下)が80㎜Hg未満で脳心血管病の累積死亡率が最も低く、高齢者においても収縮期血圧が140㎜Hg以上は、120㎜Hg未満に比較して、拡張期血圧90㎜Hg以上は80㎜Hg未満に比較して、脳心血管病の危険性が有意に高いといった報告があります。その他にも同様の報告は多数存在し、それらの蓄積した結果から日本高血圧学会では、診察室血圧(病院で測定した際)130/80㎜Hg未満 家庭血圧125/75㎜Hg未満を推奨しています。
脳神経外科領域でも日本脳卒中ガイドラインでは、脳梗塞慢性期の再発予防として130/80㎜Hg未満、頸部や頭蓋内動脈に高度の狭窄を有する患者さんは140/90㎜Hg未満を推奨しております。血圧はその人の体調や精神的状態によっても変動します。あくまでこれらの数字は自身の状態を安静時に保ち、2-3回測定して落ち着いた時の数字と考えてください。
実際は血圧がこの目標値を達成できている人は、高血圧治療中の患者さんの30%に満たないそうです。これには様々な要因があると推察されますが、一つの原因として、【クリニカルイナーシャ】、日本語で臨床的惰性といいます。わかりやすく言うと、血圧管理において勝手に許容範囲を作り出してしまうのです。「お薬飲んでいるので、この位ならいいでしょう」「自分はこれ以上血圧が低くなると調子が悪くなる」「まわり人間もこのくらいだから」「お薬はこれ以上増やしたくない」などが原因で生まれています。これらは、医療者側と患者さん側の双方で生じえます。
血圧を下げる方法は薬だけではありません。塩分制限などの食事療法や減量を目標とした運動療法、睡眠時無呼吸症候群への治療介入など様々あります。もし、このブログを読んで血圧管理をもう一度、見直してみようと思った方は、かかりつけの先生に相談してみたり、新しく先生に相談してみてください。
ちなみ先日の講演会に参加されていた血圧管理の重要性を痛感している脳神経外科、循環器内科の専門の先生方も同じご意見でした。