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単なる物忘れか認知症か

人の認知機能は加齢とともに低下するため、ある程度の年齢になれば、人や物の名前を忘れる、約束事を忘れるなどの物忘れは自然なことと言えます。忘れっぽくなること自体は病気ではありませんが、加齢に伴うものと脳の機能障害によるものとでは全くの別物です。
認知症は、早めの治療によって症状を改善できることもあります。認知症が疑れる場合は早めの脳神経外科を受診し、適切な検査を受けていただくことをお勧めいたします。
認知症診断について
頭部MRI検査をすると患者さんによく「認知症は平気?」「脳は大分縮んでいる?」と聞かれることが多くあります。
確かに非常にデリケートなことであり、年齢を重ねていくと誰もが気になる事実だと思います。しかし、頭部MRI検査のみでは、認知症であるか否かの診断はつきません。
認知症診断において頭部MRI検査を行う最も重要な意義は、頭蓋内に器質的病変が存在しないかです。認知機能低下の原因は、加齢やアルツハイマー型認知症、Lewy小体型認知症などが、すべての原因ではありません。高齢者の方の頭部外傷後に多く起きる慢性硬膜下血腫や歩行障害・尿失禁を併発する可能性のある正常圧水頭症、転移性脳腫瘍や悪性脳腫瘍の存在や急な認知機能低下であれば、脳出血や脳梗塞などの脳卒中も考えなくてはいけません。つまり、頭部MRI検査によって同定できる原因が存在しうるか否かが、検査の最大の目的となります。しかし、MRIの機種によっては、脳の海馬傍回や脳幹背側部の萎縮度合いを他覚的に評価できるVSRAD(Voxel-based Specific Regional Analysis system for atrophy Detection)や後頭葉~楔前部の脳血流低下の有無を評価することのできるASL(Arterial Spin Labelling)を行うことで、早期アルツハイマー型認知症の診断を補助することができます。当院のMRIは、しっかりと対応ができますので、普段の診療から活用するようにしております。これらの検査に加え、問診、診察、家族からの聴取をしっかりと行うことで、早期の認知症の診断率が飛躍的に向上しました。
認知症の発症は、主観的記憶障害(SCI: Subjective Cognitive Impairment) 、軽度認知障害(MCI: Mild Cognitive Impairment)といった認知機能障害の状態が、10年~15年ほど持続し起きるといわれております。1年間にMCIの10~15%程度が、アルツハイマー型認知症を発症すると言われています。このため、先にお話しした認知症診断を的確かつ早期に行うことで、早い段階での治療介入が可能となり、進行を遅らせることができます。ここで、「進行を遅らせる」と書いたのは、人間の認知機能は加齢とともに低下していくもので、ある程度は仕方のないことですが、自立した生活ができない状態になるなどの病的状態にならないように努めることは、可能だと考えています。
アルツハイマー型認知症について
アルツハイマー病型認知症は、脳が徐々に萎縮していく進行性の脳疾患です。脳の萎縮に伴い記憶や思考能力が障害されることで、最終的には単純な作業もできなくなります。根治的な治療が難しい病気ですが、早めに治療を開始することで進行を抑制できる可能性もあります。
また、近年画像診断の進歩により、早期発見が可能になっております。
早期アルツハイマー型認知症に対しては、画期的な治療薬も出現し、アルツハイマー型認知症を取り巻く状況が飛躍的に変化しております。
認知症チェックシート
- 1. 同じ事を何度も言うようになった
- 2. 忘れ物をよくするようになった
- 3. 今日の日付が思い出せない
- 4. 料理中によく鍋を焦がすことがある
- 5. 会話の中で、言葉が出てこないことがある
- 6. 趣味に関して興味がなくなってきた
- 7. 同じ物をたびたび買うことがよくある
- 8. 風呂に入る事を面倒くさがる
- 9. 身だしなみがだらしなくなる
- 10. 夜中に急に起きだして騒ぐ
- 11. 自宅の住所や電話番号を思い出せない時がある
- 12. 簡単な計算ができなくなった
- 13. 最近の会話や出来事を覚えていない
- 14. 今日食べたものを覚えていない
- 15. テレビを見ていて内容がよく理解できなくなった
上記のような症状を感じる、あるいはそのご家族は、一度脳神経外科へのご相談をお勧めいたします。特にアルツハイマー型認知症の場合は、ご自身で症状を自覚することが困難ですので、周囲の “気づき”が早期治療のカギとなります。
認知症と診断されたら
認知症の治療では、薬物療法が中心となります。ご本人への治療はもちろんですが、介助されるご家族様の心身の負担を軽減することも重要です。当院では福祉・介護利用の申請支援など、ご家族様のケアも行っております。認知症患者さんとの向き合い方について不安なことがあれば、ご遠慮なくご相談ください。
最新の医療情報を治療に反映します
最近ではアルツハイマー病の原因に作用する治療薬も開発されていますが、まだまだ一般的なクリニックで取り扱えるまでには至っておりません。日々認知症の研究は進んでおりますので、認知症治療の基本が変わる日もいずれやってくるかと思います。
当院では常に最新の認知症治療へのアンテナを張り、クリニックでの診療に反映しております。また、当院は横浜市のもの忘れ健診の指定医療機関ですので、1年に1度の健診は是非、受けるようにしてください。ご家族の認知症に関するご相談はもちろん、「将来の認知症が不安」などのお悩みもご相談いただけます。認知症についての不安や疑問があれば、お気軽に当院を頼ってください。