コラム

脳卒中① くも膜下出血

2024.08.15

私自身、脳神経外科専門医ですが、同時に日本脳卒中学会と日本脳血管内治療学会の専門医でもあり、脳神経領域の中でも特に脳血管障害を専門としています。このブログを利用して、普段短い診察時間では、話せないような脳卒中についてお話をしていきたいと思います。今回はその代表でもあるくも膜下出血についてお話します。

この病気は誰にでも起こりえる病気です。しかし、死亡率は50%近くもあり、後遺症なく発症前と同じように回復する患者さんは、30%に満たないとの報告もあり、脳卒中の中でも、最も予後(治療後の状態 以下予後と記載します)が、不良な病気の一つとして有名です。

私自身、数百人のくも膜下出血患者さんの治療に携わってきましたが、病院に来た時点での患者さんの状態と予後は、相関します。つまり、軽症で来院された方は、後遺症も少なく元の生活に戻れる患者さんが多いですが、意識不明や強い運動麻痺などで発症された患者さんは、治療後も意識が戻らないことや介護が必要になったりするケースが増えるということです。

そもそもくも膜下出血は、脳の表面を覆うくも膜という薄い膜の下に出血をきたす病気です。外傷や脳血管の異常が原因となります。その中でも「脳動脈瘤の破裂」が最も割合として多いです。この脳動脈瘤の存在は、比較的に日本人に多いともいわれています。(欧米人では、フィンランド人に多い傾向があります)日本人における脳動脈瘤保有率は、24%程度と言われていますが、脳動脈瘤はその大きさが非常に巨大かつ神経に触れる箇所にできない限りは、破裂してくも膜下出血になるまで症状はでません。つまり2550人に1人の方が、知らずにこの病気を持っているということになります。脳動脈瘤の有病リスクとして、「女性」「家族因子(近い血縁関係により強い傾向にあります)」「喫煙」「高血圧」などが挙げられます。

検査で脳動脈瘤が、偶然見つかっても焦らずに脳神経外科の専門医に相談しましょう。

脳動脈瘤でも破裂する危険性の高いものとそうでないものが存在します。少し詳しく話すと破裂率は、動脈瘤の①大きさ②形③部位によって異なります。脳動脈瘤の最大径が5㎜以上や表面が不整、細長くバランスの悪い形、内頚動脈後交通動脈分岐部や前交通動脈という部位などは、比較的破裂リスクが高く、早い段階で根治的な手術が検討されることが多いです。最近では、これらの情報をもとに脳動脈瘤を点数化し破裂率を算定することで、治療の一助としています。

これはあくまで主観的な経験談ですが、くも膜下出血を発症した多くの患者さん本人やその家族は、患者さんが脳動脈瘤を保有していることをご存じありませんでした。つまり脳の検査(頭部MRI検査にる脳ドックなど)を受けたことがない、もしくは一定期間、検査を受けていなかったという方に発症率が高いということです。もし、未破裂脳動脈瘤(破裂する前の脳動脈瘤をいいます)の段階で発見できれば、手術治療や厳重な経過観察で、破裂を回避できる可能性が高まります。これは脳神経外科医が、脳ドックなどの頭の定期検査を勧める理由の一つだと思っています。本邦の日進月歩の医学のおかげで、色々な病気が治る時代になったのは、実感しております。しかし、早期発見はどの病気に関しても必須と考えています。セルフケアの一環として、定期的に検査を受けることは本当に大切だと考えております。

 

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