二次性頭痛

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頭痛の発生メカニズム

頭痛は脳硬膜・脳血管・頭部~頸部の筋肉と人体などの痛覚を感受するとされている器官からの侵害刺激により発生します。(脳自体には痛み刺激を感じる器官は存在しないのです。)
これらに分布している一次性感覚神経線維→三叉神経節・脊髄の後根神経節を介して脊髄内の三叉神経脊髄路核という神経の通り道に入ります。その情報が脳の感覚野に投射され、頭痛を自覚します。

二次性頭痛について

二次性頭痛とは、頭痛の原因となる疾患が存在し、頭痛が引き起こされるものを指します。国際頭痛分類第3版では、二次性頭痛は詳細に8つのグループに分類されます。
それらを読み解くと日常診療で遭遇しやすい疾患として、以下が代表的な分類として挙げられます。

①頭部外傷による頭痛

  • 外傷による頭蓋内出血(脳挫傷・急性硬膜下血腫)
  • 脳震盪

② 頭頚部の血管障害により引き起こされる頭痛

  • くも膜下出血
  • 脳内出血
  • 脳静脈洞血栓症
  • 可逆性脳血管攣縮症
  • 椎骨動脈解離

③非血管性頭蓋内疾患(脳腫瘍などの頭蓋内占拠性病変)

  • 脳腫瘍
  • 低髄液圧症候群

④感染症による頭痛

  • 中枢性感染症(髄膜脳炎・脳膿瘍)

⑤眼疾患・耳疾患・鼻や副鼻腔疾患・歯・顎・頸部構成組織の障害による頭痛

  • 高血圧性頭痛
  • 頚椎症性神経根症
  • 後頭神経痛
  • 急性副鼻腔炎
  • 急性閉塞隅角緑内障

外傷による頭蓋内出血(脳挫傷・急性硬膜下血腫)

頭部に強い衝撃を受けたのち、発症する頭痛は二次性頭痛の中でも日常的に遭遇する頻度の高い1つで、頭部外傷後の頭痛は30~90%と幅はありますが、高い頻度で発生します。20%で1年経過しても後遺するという報告もあるくらいです。この中には直接の頭部外傷による頭痛と頸部の屈曲や伸展に伴うむち打ちに起因する頭痛があり、3ヶ月未満を「急性頭痛」3カ月以上持続するものを「持続性頭痛」と定義します。

頭部外傷による頭痛の原因としては、脳震盪、心因的要因、頭蓋内出血、頭頚部の血管損傷などが挙げられますが、その中でも特に頭蓋内出血と頭頚部血管損症は注意が必要です。

受傷時の意識障害がなくても一過性意識障害、健忘(記憶障害)、頭痛、嘔吐・嘔気がある場合は、必ず脳神経外科のいる病院を直ちに受診してください。通常、急性硬膜下血腫や脳挫傷などの致命的な頭蓋内出血は、頭部外傷直後から数時間以内(多くは12時間以内)に発症することがほとんどですが、稀に遅発性硬膜外血腫や外傷性脳動脈瘤や頭頚部動脈解離による出血は、数日から数週間して発症する恐れがあります。自身で強い頭部打撲があったと自覚したり上記に挙げる症状を自覚した際には、画像設備の整った脳神経外科専門医のいる病院を受診してください。

くも膜下出血

突然の激しい頭痛で発症します。典型的には今までの経験のしたことないような激しい痛みと嘔吐を伴うことがあります。しかし、症状は非典型なものもあり、軽度の頭痛~重篤な意識障害や心肺停止まで様々です。くも膜下出血の多くの原因は、自身の気づかないうちに脳血管に異常が生じていることが多いです。そのほとんどがくも膜下出血になるまで自覚症状がありません。その中で最も多い原因として脳動脈瘤破裂がありますが、一部の脳動脈瘤を除けば、くも膜下出血になるまでは症状はありません。くも膜下出血の危険性を下げる方法は定期的な頭部MRI検査が最も有効です。

脳内出血

通常、脳の血管は脳の隙間を走行するので、破綻した場合はくも膜下出血や硬膜下血腫を引き起こします。しかし、それらの血管とは別に脳には非常に細い無数の血管が脳を貫くように存在しますこれらの血管を穿通枝などと言いますが、この穿通枝が破綻する事で起き得ます。出血を起こした場所によって頭痛や麻痺などの様々な神経症状で発症します。

脳静脈洞血栓症

脳静脈洞血栓症

脳は心臓から頸動脈→脳動脈にて血液を介して酸素や糖分などの栄養が供給されます。
その後、血液は脳静脈を介していくつかの静脈洞という太い血管に収束して、心臓に血液を戻します。この静脈洞に血栓ができ、詰まってしまうと脳を栄養した血液が心臓に戻れず、脳に溜まってしまいます(うっ血)。結果、静脈が破綻し脳内出血や脳浮腫といった状態を引き起こします。4~8人/100万人にと非常に珍しい病気ですが、持病に悪性腫瘍、感染症罹患後、自己免疫性疾患、膠原病、先天性疾患などの血栓形成が起きうる病気があったり、前兆のある片頭痛患者さん、硬膜動静脈瘻の患者さん、経口避妊薬を内服されている方などは発症率が上昇します。
症状は頭痛、めまい、嘔吐、巣症状(麻痺やしびれ)、意識障害など症状は多岐にわたり非特異的ですが、頭痛は最多の症状であり、頭痛疾患においては必ず除外しないといけない疾患の1つです。頭部MRI検査では、この静脈洞を観察する方法(MRV)や通常のMRI画像にて静脈洞に血栓形成の所見があるかなどを確認することが出来るため、診断は比較的容易です。治療法は、抗血栓薬の使用と原疾患への対応が必要です。予後に関して、以前は死亡率が30~50%と報告もありましたが、近年は早期発見・適切な早期治療介入により神経学的後遺症なく70~80%の方が回復します。そのため、診断は確実にする必要がありますが、この疾患の診断にはMRI検査と専門的な知識と経験が不可欠です。

可逆性脳血管攣縮症

可逆性脳血管攣縮症

可逆性脳血管攣縮症(Reversible Cerebral Vasoconstriction Syndrome:RCVS)は、急性発症する激しい頭痛を主症状とする疾患です。この頭痛は「雷鳴様頭痛」と形容され、突然発症し、1分未満で痛みの強さがピークに達するものと定義されます。さらに、頭部画像検査では、多発性かつ分節状の脳血管攣縮が可逆的に認められることが特徴です。

画像では、同時にくも膜下出血や脳出血・脳梗塞・脳浮腫を合併することがあります。MRI画像での分節様の血管攣縮は、頭痛発症から2~3週間後がピークとなり診断が可能となります。頭部MRIにて確認できる多発性分節性可逆性脳血管攣縮は、3か月以内に改善すると言われています。
息止め・入浴・労作・性行為・感情の高ぶりなどが引き金で発症します。約1~2週間程度、間歇的な頭痛がおき、徐々に落ち着いてきます。

治療法は、誘因となる行為を避け安静とすること、血管作動薬の中断、血管拡張作用のあるCa拮抗薬(ベラパミル:ワソラン ロメリジン:ミグシス)の使用です。

この病気は、一般的に1~3か月で寛解し、死亡・後遺症例はほぼありません。しかし、脳卒中を併発した際は3~6%程度に後遺症を残してしまう可能性はあります。

診断は、脳神経外科専門医によるMRI診断が必須となります。

椎骨動脈解離

椎骨動脈解離

動脈は内膜、中膜、外膜と3層構造になっていますが、外傷や高血圧などなんらかの原因で、脳血管(脳動脈)の内膜層が剥がれてしまいそこに血流が入り込む事で、血管膨れて動脈瘤を形成し、脳出血やくも膜下出血を起こしたり、血管が閉塞して脳梗塞を引き起こしてしまう病気です。若年〜中年者の方に多く見られ、危険因子は高血圧、喫煙習慣などが挙げられます。日本人では、脳幹や小脳に灌流する椎骨動脈という重要な血管に起こる事が圧倒的に多いです。椎骨動脈解離は、後頭部に起きる突然の強い頭痛で発症します。この病気の怖い点は、くも膜下出血や脳梗塞を起こしていなくても椎骨動脈が解離する事による血管痛のみで強い頭痛を自覚します。そのため、神経症状を合併してない頭痛のみの時は、CT検査で脳卒中を否定しても、MRIなどで脳血管の評価をしなければ見落としてしまう可能性があります。治療法は入院をしてカテーテルや開頭手術になりますが、頭痛のみの症状でくも膜下出血や脳梗塞を起こしていなければ、血圧管理のみで経過を見ることがありますが、頻回なMRI検査による解離血管に変化がないか確認する必要があります。診断、治療が遅れると生命の危機に直面する非常に怖い病気の1つです。

脳腫瘍

私たちの頭蓋内圧は【脳+脳血管内血液+脳脊髄液】で、規定されほぼ一定を保っています。ここに脳腫瘍などの本来存在しないものが、頭蓋内に発生すると【脳+脳血管内血液+脳脊髄液+脳腫瘍】となり頭蓋内圧が上昇し頭痛として、症状が現れます。脳出血やくも膜下出血などの脳卒中とは異なり、突然の激しい頭痛<慢性的に続く頭痛となることが多いです。また、脳腫瘍のできた場所によって麻痺や高次脳機能障害が合併することがあります。
例えば、数カ月続く頭痛で集中力が続かない、記憶力が低下して仕事でミスが続くという訴えで、脳腫瘍が発見されたケースもありました。

低髄液圧症候群

前述したように【脳+脳血管内血液+脳脊髄液】は、頭蓋内圧を規定し、その圧は一定です。この脳脊髄液が、脊髄硬膜の損傷により漏れ出てしまうと頭蓋内圧が低下してしまいます。結果、頭蓋内は浮力が低下し、脳実質は重力により下垂し牽引性の頭痛を引き起こします。特徴として横に寝ていると楽だが、座ったり、立ったりして頭の位置が高くなると5分以内に頭痛(起立性頭痛)が出現します。また、耳が詰まった感じがする(耳閉感)やめまいの症状を併発する事もあります。要因としては、原因不明なケースも多いですが、頸部~腰部の打撲による硬膜損傷やいきむ動作(重いものを持ったり、排便時など)が引き金となることもあります。診断はMRI検査やミエロCT(造影剤)などで診断しますが、起立性頭痛が時間が経つにつれ警戒してくることもあるので、詳細な問診と診察が大切となります。

治療方法は入院にて臥位安静(背中を下にして横になる)と点滴による補液となりますが、改善が認められない時は、自分の血液を採取し背中から脊髄の硬膜外に注射して、損傷した硬膜に蓋をするブラッドパッチ法が行われることもあります。

中枢神経感染症(髄膜炎 脳炎 脳膿瘍)

脳の血管には血液脳関門(blood-brain barrier: BBB)というバリア機能があり、血液内の細胞や病原菌が脳神経に容易に入り込めない構造になっています。しかし、感染症が重症化することにより、免疫機能が活性化しBBBが破綻してしまうことがあります。
すると本来、無菌であるはずの脳脊髄内で細菌やウイルス感染が起きます。結果、髄膜炎や脳炎、脳に膿が溜まってしまう脳膿瘍を引き起こすことになります。
髄膜炎は、感冒症状などの高熱時に首が曲げられなくなるほど固くなったり(項部硬直)、頭を少し揺らしたり、降ったりするだけで増悪する強い頭痛(jolt accentuation)が起きます。
これら頭痛の症状に加えて、嘔吐、意識障害や神経巣症状(運動麻痺・失語症・感覚異常など)が出現すると脳炎や脳膿瘍と更に重篤な状態になっていることもあります。
高熱時の頭痛がいつもと違うような強い頭痛で会った際は、我慢せずに病院を受診するようにしてください。

高血圧性頭痛

血圧が180/120㎜Hg以上など高度上昇した際に起き得ます。通常、降圧薬による決タウ低下で焼失します。

頚椎症性神経根症・後頭神経痛

頸椎の脊髄から分岐する神経根症から頭部や腕などの領域に神経が分布します。何かしらの原因(頸椎椎間板ヘルニアや変形性頚椎症)で、その神経が圧迫、損傷すると強い痛みを自覚することがあります。後頭部や後頚部(首の後ろ側)に締め付けられるような重い痛みからズキンっと突き上げるような響く痛みが特徴的です。特に頸椎の2~3番目の神経根から出てくる後頭神経による痛みは(後頭神経痛)、後頭部に間歇的にズキンっと突き上げるような耐え難い響く痛みを引き起こします。神経痛は、通常の消炎鎮痛剤(ロキソニンやカロナールなど)が効かないこともあり、その際は神経痛をブロックするような薬や抗うつ薬、抗てんかん薬、筋弛緩剤、ビタミンB12製剤をいずれかを上手に併用します。

その他の頭痛

頭痛=脳の病気と考える患者さんも多くいらっしゃいますが、急性副鼻腔炎 急性閉塞隅角緑内障 帯状疱疹など脳の病気とは関係のない疾患が、頭痛を引き起こしている可能性もあります。いつもと違う頭痛、ひどい頭痛、よくならない頭痛がある時は、自己判断せずに病院を受診してください。医師は頭痛の原因を色々な観点から考える必要があります。

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