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椎骨動脈解離とは

人体の動脈の基本構造は、内膜・中膜・外膜という3層構造でできています。脳血管障害の一つである椎骨動脈解離とは、外傷、急激な首の動き、高血圧、喫煙などの原因により、脳へ向かう動脈の内側(内膜)に傷がつくことで、血管壁の中に血液が入り込んでしまう病気です。
血管壁の中に血液が入り込むことで、動脈がふくらんで動脈瘤を形成したり、反対に動脈の正常な血管腔が狭くなったり、詰まったりすることがあります。その結果、くも膜下出血などの出血性脳卒中を起こす場合と、脳梗塞などの虚血性脳卒中を起こす場合があります。
椎骨動脈は、脳幹や小脳という、呼吸・意識・ふらつき・バランスなどに関わるとても重要な脳へ血液を送る動脈です。日本では、脳動脈解離の中でも椎骨動脈に発生するケースが比較的多いとされています。
椎骨動脈解離の症状

椎骨動脈解離の代表的な症状として、突然の強い後頭部痛や首の痛みが挙げられます。
解離の結果、くも膜下出血をきたすと、強い頭痛や意識障害を引き起こします。また、小脳や脳幹部に脳梗塞をきたすと、めまい、運動失調、歩行障害、眼振、半身のしびれや感覚異常・運動麻痺、言語障害、嚥下障害などの神経症状を認めることがあります。
しかし、この病気の特徴として、くも膜下出血や脳梗塞を発症していなくても、解離した血管そのものの痛みによって、強い頭痛を自覚することがあります。このため、CT検査や通常のMRI検査で脳出血や脳梗塞が否定されても、MRAなどで脳血管を評価しなければ、椎骨動脈解離を見落としてしまう可能性があります。
早めの受診が必要な症状
特に、以下のような症状がある場合は、早めの受診が必要です。
- 今まで経験したことのない突然の強い後頭部痛
- 首の後ろの強い痛み
- 痛みが持続する、または徐々に悪化する
- めまい、ふらつき、吐き気を伴う
- 手足のしびれ、ろれつが回らない、物が二重に見える
椎骨動脈解離の検査
MRI・MRAによる脳血管評価
椎骨動脈解離が疑われる場合には、頭部MRIだけでなく、頭部MRAによる脳動脈評価が重要です。
病態に応じて、頭部CT(Computed Tomography)、頭部CTA(Computed Tomography Angiography)、脳血管撮影などが行われることもあります。
初回検査後の経過確認
椎骨動脈解離は、発症直後には画像変化がはっきりしないことがあります。さらに、短期間で動脈解離部の形状変化をきたす恐れもあるため、初回検査だけでなく、必要に応じてMRI・MRAなどで短期間内での経過を把握する必要があります。
椎骨動脈解離の治療
椎骨動脈解離の治療方針は、発症の仕方によって大きく異なります。
大きく分けると、以下の3つに分けて考えます。
①頭痛のみで発見された場合
脳梗塞やくも膜下出血を起こしておらず、頭痛や首の痛みのみで発見された場合は、安静、血圧管理、痛みに対する治療を行いながら、慎重に経過をみます。この段階では、動脈解離部位が急激に変化することがあるため、頭部MRI・MRAなどで経時的に確認することが重要です。
脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕では、虚血症状のない頭痛・頚部痛のみの脳動脈解離や、偶然発見された脳動脈解離に対しては、抗血栓療法(血液をサラサラにする薬)は有効ではないとされています。
そのため、「解離動脈が狭窄している=抗血小板薬や抗凝固薬を使用する」ということではなく、解離の部位、動脈の形状、側副血行路の有無、動脈瘤の有無、症状の経過をみながら判断します。
この判断については、脳神経外科専門医としての経験と知識が重要であると考えております。
②脳梗塞を起こしている場合
椎骨動脈解離によって動脈が狭くなったり、閉塞したり、血栓が飛んだりすると、脳幹や小脳に脳梗塞を起こすことがあります。
この場合は、脳梗塞の治療として、抗血小板薬などの抗血栓療法を検討します。
しかし、解離した動脈に明らかな動脈瘤形成がある場合、抗血栓療法によって、くも膜下出血の危険性が高まる可能性があります。そのため、脳卒中治療ガイドライン2021〔改訂2025〕においても、解離部に瘤形成が明らかな場合の抗血栓療法は勧められない方向で整理されています。
抗血栓療法を行う場合は、漫然と長期に続けるのではなく、画像所見を参考にしながら、一般的には3〜6か月程度を目安に、症例ごとに継続の必要性を判断します。
また、発症早期の脳梗塞かつ重症例として診断された際は、血栓溶解療法や血管内治療による再開通療法が適応となるケースもあります。
③くも膜下出血を起こしている場合
椎骨動脈解離による動脈の破綻により、くも膜下出血を起こすことがあります。
この場合は、命に関わる非常に危険な状態であり、再出血予防のための迅速な専門的かつ高度な治療が必要となります。
出血発症の椎骨動脈解離では、急性期に再出血をきたすことが多く、早期診断と治療介入が重要です。
治療方法としては、椎骨動脈の解離部位の再出血予防として、血管内治療または外科的治療が検討されます。
血管内治療・外科的治療
血管内治療では、動脈の解離部位を正確に見極めて、コイルなどで閉塞する治療、ステントを併用する治療などがあります。
外科的治療では、開頭手術により解離した動脈を処置する方法があります。
どの治療が適しているかは、解離の部位、反対側の椎骨動脈の発達、後下小脳動脈という重要な枝の位置、脳幹や小脳への血流が保てるかどうかによって変わります。
そのため、出血を伴う椎骨動脈解離では、脳卒中専門施設や脳血管内治療が可能な施設での緊急対応が必要になります。
椎骨動脈解離は早期発見が大切です
椎骨動脈解離は、比較的若い方から中年の方にも起こり得る病気です。高血圧、喫煙、動脈硬化性因子、外傷、急な首の動きなどが誘因となることがありますが、明らかな原因がない場合もあります。
大切なのは、「頭痛だけだから大丈夫」と自己判断しないことです。
突然の強い後頭部痛や首の痛みがある場合、特にこれまで経験したことのないような強い痛みであれば、CT検査やMRI検査で脳出血や脳梗塞がなくても、MRAを行っていない場合には、脳血管の異常が隠れていることがあります。
当院でのMRI・MRA検査
横浜市神奈川区の上田クリニック 脳神経外科では、頭痛の診察において、必要に応じてMRI・MRAによる脳および脳血管の評価を行うことが可能です。
MRAによる脳動脈評価は、くも膜下出血や脳梗塞を起こす前に危険な血管病変を発見し、重篤な脳卒中を予防するためにとても重要な検査方法です。
